適応障害

全般性不安障害

適応障害とは、新しい環境になかなか馴染めず、それによって様々な症状が心身で現れるようになってしまい、やがて日常生活に影響が及んでしまっている状態を言います。

この場合は、原因が特定されていることが大半で、そのほとんどが生活環境の変化です。具体的には、新しい土地や職場、学校に移る、昇進、配置転換などがきっかけになることが多いです。つまり適応障害は、ストレスに対する正常な感情的反応(ストレス反応)の延長線上にあると言えます。したがって健康な方が受けるストレス反応との違いは重症度になります。なお環境が変わってから発症に至るまでの期間ですが、これは生活の変化や強いストレスのかかる出来事が生じてから1ヵ月以内にみられるようになると言われています。

症状について

発症後によくみられる症状は、抑うつ気分、不安、心配といったもので、普段とは異なる問題行動(遅刻、欠勤、早退、暴飲暴食など)や身体症状(不眠、食欲不振、全身倦怠感、疲れやすい など)も現れるようになります。

これらの症状というのは、うつの症状にもよく似ているわけですが、うつ病とは違ってストレスの原因や出来事がはっきりしています。そのため原因を取り除くことで次第に症状は改善されるようになるわけですが、ストレスの原因から離れられないような場合は、症状が慢性化することもあるので要注意です。

治療に関して

治療についてですが、ストレス因の除去が一番ですので、まず原因とされるストレスの軽減を図るようにします。そして環境を調整していき、適応しやすい状態に整えていくようにします。

環境調整が困難な場合は、精神療法(非薬物療法)として認知行動療法や問題解決療法を行っていきます。なお薬物療法を用いる場合は対症療法が必要な場合で、その際は抗不安薬や抗うつ薬などを用いていきます。

強迫性障害

強迫性障害もパニック障害と同様に不安障害のひとつです。これは頭の中では無駄な行為であると患者様ご自身も理解しているのにも関わらず、その状況が繰り返し脳内に浮かんでしまう(強迫観念)ことで、その行動を繰り返さずにはいられなくなる(強迫行為)状態を言います。

上記のような症状がある場合、すでに強い不安やこだわりが日常生活にも支障をきたすようになっていて、強迫障害は常に不安が根底に存在しております。またこのような強迫症状は、うつ病や統合失調症といった患者様にもみられることから、しっかり鑑別していく必要があります。

強迫性障害でよくみられる症状(例)

  • 汚れや細菌汚染を恐れて何度も手洗いや洗濯、入浴などを繰り返す
  • 何度も何度も窓や玄関のカギ、ガス栓、電気器具のスイッチなどを確認する
  • 誰かに危害を加えたのではないかと心配になり、通って来た道を戻って確認する
  • 自分の決めた回数や手順に沿って物事を行わないと不安になり、それに従う
  • 物の位置や左右対称性、数字などにこだわりがあり、それから外れると不安になる など

治療について

発症の原因に関しては、現時点では完全に解明されていません。しかし最近になって、脳内の神経伝達物質のひとつでもあるセロトニンの代謝が関係しているという説がさかんに言われるようになりました。ちなみに脳内には実に多くの神経細胞が接続しながら情報を伝達しているわけですが、その接続部分をシナプスと呼び、そこで情報を伝達する物質が神経伝達物質なのですが、その一つがセロトニンなのです。なおシナプスには、神経細胞から放出され自由に活動できるフリーセロトニンが存在するわけですが、強迫性障害の患者様の場合、このフリーセロトニンの量が少ないと考えられています。

また強迫障害は好発しやすいタイプとして、几帳面、完璧主義といった性格(強迫性格)の方がなりやすいと言われています。なお発症しやすい世代については20歳前後が最も多く、男性患者の方が早い年齢で発症する傾向(日本での平均発症年齢は、男性22歳、女性24歳)にあると言われています。なお女性が発症するきっかけは生活の変化(結婚、出産 など)が多いです。

治療について

患者様にみられる特徴的な症状をみて医師が判断します。その結果、治療が必要となれば薬物療法と精神療法を組み合わせて行っていきます。

薬物療法では主に抗うつ薬のSSRIを使用しますが、症状が強く出ている場合は抗不安薬を用いることもあります。さらにこれらと併せて精神療法として曝露反応妨害法も行っていきます。これは、認知行動療法の一種でもあるのですが、その内容は強迫症状が出やすい環境をあえて用意し、その場に患者様を直面させることで刺激を与えるというものですが、不安が自然に消えるまでその刺激を強くしていき、その環境に慣れさせるという精神療法になります。

対人恐怖症(社交不安障害)

対人恐怖症は社会不安障害とも呼ばれています。これは、人からの注目を一身に浴びてしまう場面において、恥をかきたくないなどの思いが高まってしまい、そのことで強い不安や緊張に襲われてしまい、次第に発汗や震え、息苦しさといった身体症状が現れるようになります。この経験を非常に苦痛であると感じてしまうことで、以降はできる限り人前に立つような場面を避けたいという思いが強くなり、遂には日常生活に支障をきたしてしまっている状態にある場合に対人恐怖症と診断されます。

人前に立つと以下の症状がみられるという方は、
一度ご相談ください(例)

  • 異常に緊張する
  • 手足、全身、声の震えが出る
  • 顔が赤くほてる
  • 脈が速くなり、息苦しくなる
  • いつもよりたくさんの汗をかく
  • 繰り返し吐き気がする
  • 口がカラカラに渇く
  • トイレが近くなる、または尿が出なくなる
  • めまいがする など

治療について

診断は、医師による問診によってつけられます。その結果、対人恐怖症の診断を受けた場合、治療となります。その内容は、薬物療法と精神療法の併用となります。

薬物療法では、セロトニンを増やすとされる抗うつ薬(SSRI)が主に使用されますが、医師が必要と判断すれば抗不安薬も用いることもあります。

また精神療法も行っていくわけですが、これは認知行動療法か森田療法を行っていきます。ちなみに森田療法とは、不安という症状を必ずしも排除しようというものではなく、それを受け入れつつ、現実で必要とされる行動をしていこうという精神療法です。つまり現状を受け入れながら、ポジティブな生き方をしていこうという内容になります。